スウェーデンの大学で卒業論文を書くのってどきどきでした!押さえるべきポイントをご紹介します!
スウェーデンの大学生活4年間の過程で、1年目から卒業論文を書くに向けて、ずっと論文の書き方を叩き込まれていったな~、という印象があります。
それまで何度も論文を書いていたので、修士論文はそこまで苦労をすることもなく、それなりに納得するものが書け、成績は良い/ G(Godkänt)・とても良い/ VG(Väl godkänt)・不合格/U(Underkänt)と3つある中、VGを収めることができました。
書き終わった後に、VG・G・Uそれぞれの成績がついた他の人の学士・修士論文を読むことができて、こういう事がポイントなのか~、なんてことが分かったので、今回は、スウェーデンの大学で卒業論文を書く際に、知っておいてもいいことについて書こうと思います。
といっても、分野によって論文の書き方も変わってくると思いますので、あくまでも私が知り得た範囲、ということをご了承くださいませ。
また論文の評価基準は、私が通っていた大学のものです。大学によって多少変わることもあるかもしれません。
(私達が行ったのは 定性的調査(Qualitative research) で、インタビューからの一次データと、企業の年報やホームページからの二次データを集めて研究を行いました。)
スウェーデンで修士論文を書いた
私がとったCivilekonomprogramは、学士3年と修士1年のプログラム(240hp)で、この場合Magisteruppsats(15hpか30hp)を書きます。(hp=högskolepoäng: 大学で取得できる単位)
その他の2年の修士のコースでは、Masteruppsats(15hpか30hp)を書くのですが、この両方の論文は訳すと同じ修士論文となります。
なので、スウェーデン以外では、この2つの論文に違いなく、同じ修士論文になると思われます。
プログラムによって卒業論文が15hpと30hpかが変わってくるのですが、先生に15hpと30hpの論文の違いは何かと聞いたら「収集するデータの量の違い」だと説明されました。
この差は特に明確に数値で示されているわけではないのですが、30hpの論文の方が、合格ラインとなるためには、アンケートやインタビューなどで、より多くのデータを集めることを求められるのだそうです。
生徒に求める論文のレベル
学士や修士の論文で、生徒に最低限何を求めているかと考えると「論文の基本に基づいて論文を書けているか」ではないかと思います。
論文の構成は、見出しの名前や方法が多少変わるものの、基本は同じ。
リサーチギャップを見つけ、それに対する背景・目的・研究意義を示して、研究方法・結果・分析を提示してから、結論を述べる。
評価の方法から、まずは、この基本に則って論文を書けているかを見ているなと感じました。
これプラス、オリジナリティや研究の意義の大きさ、新しい視点が加わっている論文は、より高く評価されていました。
論文の構成
Front page-Title/ Försättsblad-Titel 表紙とタイトル
表紙をつけるのはとても簡単なことなのですが、不合格となった論文には表紙がついていないものもありました。
Acknowledgements/ Förord 謝辞
通常、謝辞は表紙の後に書き、1ページ以上は書かないことが多いです。スーパーバイザーやoppositionをしてくれたグループ、家族など、論文を書くにあたってお世話になった人に、感謝の気持ちを書きます。
Abstract/ Sammanfattning 要約
論文の要点を1ページにまとめて書きます。
- 問題
- 背景
- 目的
- 定義
- 仮説(あれば)
- 方法
- 結果
- 結論
の順に書くと、すっきりと要点をまとめられます。
参考: https://www.scribbr.com/dissertation/abstract/
Table of contents/ Innehållsförteckning 目次
Wordなら見出しを作ることで、Table of contentsを簡単に挿入できるので、問題なし!
Introduction/ Introduktion 序章
この章の構成例
- Background/ Bakgrund 背景
- Problem Discussion/ Problemdiskussion 問題提起・議論
- Purpose/ Syfte 研究の目的
- Research Question/ Frågeställning リサーチクエスチョン
- Delimitation/ Avgränsning 研究範囲の限定
- (Thesis outline/ Disposition 論文の構成)
- 論文で取り上げるリサーチクエスチョンの背景が示されているか
- このリサーチクエスチョンを取り上げる意義、目的が示されているか
- リサーチクエスチョンの、過去の文献や論文との関連を示しているか
- 研究の余地があるのに、過去の文献や論文には取り上げられていない「リサーチギャップ」が示されているか
論文を書き始めるに当たって「リサーチギャップ」を見つける重要性を、何度も授業で言われました。
様々な論文や文献を読んで、今まさに研究すべき問題を見つけ(関連性のある問題)、さらに過去には研究されていないこと(リサーチギャップ)を見つけることが、まず最初にやることで、そこから、リサーチクエスチョンを明確にします。
この土台がなければ、論文全部が崩れていってしまいます。不合格だった論文は、リサーチギャップが示せていなかったので、論文全体の意義が薄くなってしまってました。また、この章でより多くの文献を引用することで、論文の信頼性や内容の話題性を示すことができますが、不合格だった論文は引用が少ないことを指摘されていました。
Theoretical framework/ Teoretisk referensram 理論構成
論文で取り扱う問題に関連する、過去の文献、論文や理論についてここで書きます。
ここで述べられた理論は、後で分析を行う際のサポートとなります。
- 理論が、論文で取り扱っている問題と目的に関連しているか
- 理論の話題性があるか(取り上げるべき理論であるか)
- 論文の著者が、どの範囲で理論を使うかを示せているか、ただ単に文献に載っていたものを載せていないか
Method/ Metod 調査方法
この章の構成例
- Research Approach/ Forskningsansats リサーチアプローチ
- Case selection/ Urval ケースの選択
- Data collection/ Data insamling データ収集
- Data analysis/ Analys av data データの分析
- Validity and Reliability/ Validitet och Reliabilitet 妥当性と信頼性
- 論文のリサーチクエスチョンに答えるための方法を選択しているか
- 方法の選択・分析方法・データの収集方法に関する明確な説明と議論がなされているか
- 行われた方法の長所と短所に関する著者の認識が示されているか
Empirical findings/ Empiri 経験的データ
Quantitative research (定量的調査)の場合、見出しにResults/ Resultatが使われたりしてます。
収集されたデータやデータソースの説明をします。
- リサーチクエスチョンに関連するデータの量と質を収集できているか
- 構造化された明確な方法で、データを提示できているか
インタビュー、アンケート、企業からの情報提供、文献、などで十分な量のデータを集められているかはとても重要で、生徒にとってはデータ収集は難しい事の一つです。
不合格だった論文は、質と量共にデータが足りないとの指摘を受けて、合格のためにはデータの取り直しをしなければならない、とありました。
Analysis/ Analys 分析
前章で示したデータを分析します。
- データの分析ができているか
- 収集したデータに理論を関連付けて議論しているかどうか
- 構造化された明確な方法で、分析結果を提示できているかどうか
収集したデータに間違った理論を関連付けて、無理やり議論しようとすると、バレます(;’∀’)
そして、そもそも多くのデータを収集できてないと、内容が薄くなって、分析の段階で苦しくなります。。。
Conclusion/ Slutsatser 結論
この章の構成例
- General conclusion/ Slutsatser 結論
- Managerial implications/ Praktiska implikationer 実用的な意味
- Theoretical contributions/ Teoretiskt bidrag 理論的な貢献
- Further research/ Vidare forskning さらなる研究への提案
- 論文で取り上げている問題に関連した結論を導き出せてるか
- 結論が一般化できる可能性があるか
- 論文が及ぼす、理論的および実践的な貢献を示せているか
- リサーチクエスチョンに対する答えが述べられているか
- さらなる研究のための提案を提示できているか
結論は、リサーチクエスチョンが”How/ Hur?”、 “What/ Vad?”、 “Yes/No question” によって答え方が変わってきます。
Reference/ Referenser 参考文献
スウェーデンで多く利用されている参考文献の引用方法は、APA (the American Psychological Association) style だそうです。
APAはヘッダーなどのフォーマットも詳しく触れていますが、それよりも大学では、引用の仕方や参考文献の書き方をAPAに従うことを重視しているように思います。
Appendix/ Bilagor 付録
インタビューガイドや、アンケートなどをここに載せます。
スウェーデンで卒業論文を書く
私達の論文のスーパーバイザーを担当してくれた教授によると、理論ばかり多く集めて、収集データが少ないのは生徒の論文によくある傾向だそうです。
有益なデータをどれだけ集められるかは、評価に大きく関わるようです。
また、私達は、論文を書く過程で、Diva portalという、スウェーデンにある50の大学や研究機関で出版された、学術論文や学生の論文を検索できるオープンアーカイブも、よく利用しました。
Diva portal から学生の論文を読み、論文の構成や参考文献などを参考にできたので、とても役に立ちました↓
ただ、学生の論文は間違いもあるので、学術論文を主に参考にするように、とも言われました。
ということで、スウェーデンの大学で学士・修士論文を書くのに知っておいてもいいことについて書きました。
論文は1つの正解が無いので、構成も内容も先生によってアドバイスが違ってきたりしますが、私が大学4年で学んだ内容を書きました。
少しでも、論文を書きやすくする助けとなりますように。
スウェーデンの大学でしんどかったことの記事はこちらです↓